2018/01/07

親と子どものためのマインドフルネスとは?【lifehacker】



キーワードは、「いまにいる」「理解する」「受け入れる」。親と子どものためのマインドフルネスとは?

『親と子どものためのマインドフルネス』エリーン・スネル著、出村佳子訳


この小さな本には、子どもと大人が、不安やあせり、いらだち、恐怖をやわらげ、気持ちをスーッと落ち着かせるのに役立つ、シンプル子育ての秘訣とマインドフルネスのアイデアがたくさんつまっています。
(「まえがき」より)

これは、『親と子どものためのマインドフルネス』(エリーン・スネル、ジョン・カバットジン著、出村佳子訳、サンガ)冒頭に書かれているフレーズ。なおマインドフルネスをご存知の方は多いと思いますが、本書ではそれを次のように定義づけています。

マインドフルネスとは、ひとことでいうと、よいとか悪いという価値判断を入れずに「いまここ」に意識を向け、ありのままに気づくことです。(中略)人生では、さまざまな波が起こってきます。私たちは波を操作することも、止めることもできません。でも、波に乗ることはできます。

絶えず変化しつづける人生の波にうまく乗り、「いまここ」に生きるコツが、このマインドフルネスにあります。気持ちの波をあるがままに、やさしく見つめることで、事実や状況に基づくよい選択をし、よい生き方ができるようになるのです。

(「まえがき」より)

このような考え方を軸に、「親と子ども」という観点からマインドフルネスを考える本書のなかから、マインドフルな状態で子育てする方法を紹介した2章「ありのままに向き合う」を見てみることにしましょう。

波は止められない

人に、海をコントロールすることはできません。波を止めることもできません。しかし、波に乗ってサーフィンすることは可能。著者によれば、これはマインドフルネスの基本となる大切な考え方なのだそうです。

人はさまざまな問題を抱えているもので、それが「生きる」ということでもあります。誰だって悲しみやストレスを感じているものなのだから、対処しなければならないことがいつでもあるということ。


しかし、人生のさまざまな場面においてしっかりと「いまにいる」のであれば、なにかを抑圧することもなく、問題が起こらないようにただ祈るだけでもなく、「本当に必要なものはなにか」がわかるというのです。

意識を集中させ、こころの波をあるがままに見つめてください。そうすることで、事実や状況に基づくよい選択ができ、それに応じて行動することができるのです。

こころがいらだった瞬間、すぐにそのいらだちに気づいてください。

(50ページより)

がまんできなくなったり、誰かを叩きたくなったりしたとき、その気持ちに気づきさえすれば、次にどう行動すべきかが選択できます。そして気づくことで、自分の感情にも、あまり流されなくなるものでもあります。一度立ち止まり、待ち、ひと息つけるということです。
そして状況を観察し、自分がなにを感じているのか、なにを考えているのか、どんな行為をしたがっているのかに気づくことができるといいます。また、波をあおっている力に気づき、感情的に反応したがる心にも気づくようになるそうです。あるいは、「波はこうあるべき」といった思い込みが弱くなっていることも発見できる可能性も。
つまり、頼りになるのは「一度立ち止まること」。親も子どもも、いったん立ち止まることで、よい効果が得られるというわけです。ちなみに、一度大きく深呼吸するだけでも、感情的な反応をしなくなるものだといいます。(50ページより)

人生の波

「人生の波に乗る」ことを学んでいくステップのなかで、いちばん重要なのは「立ち止まって観察すること」。困難な状況に出会ったとき、一度立ち止まり、状況を注意深く観察することで、さまざまな対応ができるようになるというのです。

その結果、いらだちに駆られて反射的に反応することが少なくなり、落ち着いてよく理解してから対応できるようになるのだといいます。さらには、問題を引き起こしているのは「状況」ではなく、「状況に対する自分の反応だ」ということが少しずつわかってくることに。(53ページより)

こころをひらいて子育て

子育てはいうまでもなく大変な仕事ですが、そこにリラックス効果をもたらす基本的な要素は、「いまにいる」「理解する」「受け入れる」ことなのだそうです。しかも注目すべきは、親はもちろんのこと、それらは子どもにも効果があるということ。
この3つのことを実践し、偏見を持つことなく、心をひらいて子育てすることで、自分自身と子どもをあるがままに見られるようになるということ。異なった表現を用いるなら、親の期待や希望(あるいは他人の期待)で見ることはしなくなるというわけです。
そしてその結果、子どもに生涯にわたる自信の土台——たとえどんなことが起きたとしても、いつでも戻ることができる「安全な場」を与えることができるというのです。(59ページより)

“いま”にいる

「いまにいる」ことで、いまこの瞬間に触れることができると著者はいいます。ものごとに対して反射的に反応するのではなく、心を開き、好奇心や思いやりを持って、“いまの瞬間”に触れることができるということ。
いまにいてください。かんしゃくが起きたら、その瞬間、かんしゃくとともにいてください。学校に行くときも、帰るときも、いまにいてください。楽しいときも、苦しいときも、いつもの決まりきった生活をしているときも、どんなときも、どの瞬間も、いまにいるのです。(60ページより)

いまにいればいるほど、失敗が少なくなるといいます。好きとか嫌い、よいとか悪いの問題ではなく、「いまここ」にしっかり意識を向けることが大切だという考え方。つまり、それこそが「いまにいる」ということなのでしょう。(59ページより)

理解する

「理解する」ことによって、子どもの身になって考え、子どもとよい関係を築くことができるそうです。特に理解が必要なのは、ものごとが思わぬ方向に展開したとき。だからこそ、そのときその場で、「子どもの心で起きていること」に純粋に関心を向けてほしいと著者。そうすれば、これまでなかった深い理解が得られるというのです。(60ページより)
いま、子どものこころでなにが起きているでしょうか? 子どもはなにを考えているでしょうか?

理解するとは、子どもの立場から見るということです。また、広い視野を持って、子どもがあなたからなにを必要としているのかに目を向けることなのです。(60ページより)

受け入れる

「受け入れる」とは、自分の考えや気持ちを理解するのと同じように、子どもの考えや気持ちを理解しようとすることなのだといいます。このとき大切なのは、子どもを無理やり変えようとしないこと。あやつろうともしないこと。子どもや自分のどんなところも拒絶せず、排除もせず、すべてを受け入れるということ。

たとえば、子どもが自分の期待に応えてくれなかったときにも、静かにしなければならない場面で叫んだときにも、プレゼントをもらったのにお礼を言わなかったときにも、あつかましい態度をとったときにも、どんなことも受け入れるべきだというわけです。

それだけではありません。子どもだけではなく、自分自身が「いま」にしっかり目を向けていないとき、やさしさに欠けているとき、子どもの言ったことにがまんできなかったとき、理想的な親とは言えないふるまいをしたときなどにも、すべてを受け入れることが大切だというのです。

受け入れるとは、がまんすることではありません。親として、「子どもや自分自身の感情、考え、行動に価値判断を入れずに、ありのままに見る」ということです。
(62ページより)

受け入れるとは、子どもといがみ合わないことでもあるそうです。親子間の無条件の愛情にさえ、浮き沈みがあるもの。しかし、受け入れる練習を重ねていくと、起きてくるすべてのことに心を開き、歓迎することができるようになるのだとか。そして注意深く取り組み、対処できるようにもなるといいます。(61ページより)


著者も認めているように、子育ては大変なこと。でも、そこにマインドフルネスの発想を盛り込んでみれば、たしかに気持ちは変化しそうです。親子で楽しめるマインドフルネス・エクササイズのCDも付嘱した本書を活用してみれば、子育てのストレスが減っていくかもしれません。
印南敦史氏



エリーン・スネル 著(Eline Snell/ Jon Kabat-Zinn)
出村 佳子 訳(Yoshiko Demura)/サンガ